形声(形声文字)とは
形声(けいせい)とは、意味を表す部分と音を表す部分を組み合わせて新しい字を作る方法です。この方法によって作られた文字を形声文字といい、漢字を分類する伝統的な枠組み「六書(りくしょ)」のひとつに数えられます。漢字全体の八割以上が形声文字だといわれています。
形声の意味
形声は、漢字を構成する部品に意味を担う役割と音を担う役割を分担させ、その二つを組み合わせて新しい字を作る方法です。意味を表す部分を意符(いふ)または形符、音を表す部分を音符(おんぷ)または声符と呼びます。
たとえば「江」は、意符「氵(水)」が水に関わる意味を、音符「工」が読み「コウ」を表しています。「校」も、意符「木」と
音符「交」(コウ)からなる形声文字です。
意味と音を別々の部品に分担させるこの方法は、決まった部品を組み合わせるだけで効率よく新しい字を作れるため、漢字をいちじるしく増やす原動力となりました。
代表的な形声文字の例
形声文字は、意符と音符がどの位置に置かれるかによって、いくつかのパターンに分けられます。代表的な例を挙げると次のとおりです。
| 配置 | 漢字 | 意符+音符 |
|---|---|---|
| 左が意符・右が音符 | 江・校・紙 晴・銅 |
氵+工、木+交、糸+氏、日+青、金+同 |
| 右が意符・左が音符 | 期・郡・鳩 | 其+月、君+阝、九+鳥 |
| 上が意符・下が音符 | 草・空・宇 | 艹+早、穴+工、宀+于 |
| 下が意符・上が音符 | 盤・婆・基 | 皿+般、女+波、土+其 |
| 外が意符・内が音符 | 園・閣・病 | 囗+袁、門+各、疒+丙 |
形声文字の特徴
形声文字には、ほかの分類と比べて次のような特徴があります。
- 漢字の八割以上を占める:意味と音を担う部品を組み合わせるだけで効率よく新字を作れるため、形声は漢字の造字法の主流となり、現存する漢字の大多数を占めています。
- 読みの手がかりが字の中にある:音符の部分から、その字のおおよその読みを推測できることがあります。未知の漢字に出会ったときの手がかりになります。
- 意符が部首になることが多い:意符はその字の意味の分野を表すため、漢和辞典では意符の部分が部首として扱われることが多くあります。
意符と音符の仕組み
形声文字を理解するうえで大切なのが、意符と音符の役割分担です。同じ意符を共有する字は意味の分野が、同じ音符を共有する字は読みが、それぞれ近くなる傾向があります。
| 共有する部品 | 漢字の例 | 共通する性質 |
|---|---|---|
| 意符「氵(水)」 | 河・海・池 流・湖 |
いずれも水に関わる意味を持つ |
| 意符「言」 | 語・話・記 読・論 |
いずれも言葉に関わる意味を持つ |
| 音符「青」 | 清・晴・請 精・情 |
いずれも「セイ」または「ショウ」と読む |
| 音符「己」 | 記・紀・起 | いずれも「キ」と読む |
このように、形声文字は意符で意味の分野を、音符で読みを示すという、二つの手がかりを一字の中に併せ持っています。
音符から読みを推測する
形声文字の大きな利点は、音符の部分から読みを推測できることです。たとえば「清・晴・請・精」はいずれも音符「青」を持ち、「セイ」という共通の読みを持ちます。知らない漢字に出会っても、見覚えのある音符が含まれていれば、読みの見当をつけられることがあります。
注意音符はあくまで読みの「手がかり」であり、つねに正確とは限りません。漢字が中国から日本へ伝わり、長い時間を経るなかで、もとは同じだった音が変化したり、日本語の中で読み分けられたりしたためです。たとえば音符「工」を持つ字でも、「江(コウ)」「紅(コウ・ク)」「空(クウ)」のように、読みが完全には一致しないことがあります。音符は便利な手がかりですが、最終的には辞典で確認することが大切です。
会意文字との見分け方
形声ともっとも混同されやすいのが会意です。どちらも二つ以上の部品を組み合わせて作りますが、部品の役割が異なります。
| 観点 | 形声 | 会意 |
|---|---|---|
| 部品の役割 | 意味を担う部品(意符)と音を担う部品(音符)からなる | すべての部品が意味を担う |
| 音との関係 | 音符が字の読みの手がかりになる | 部品が字の読みを直接表すことはない |
| 例 | 江・校・晴・銅 | 休・林・明・信 |
見分けのポイント組み合わさった部品のうち、一つが字の読みに対応していれば形声、すべてが意味に関わっていれば会意と考えると整理しやすくなります。たとえば「晴」は「青」が読み「セイ」を表すため形声、「明」は「日」も「月」も明るさという意味に関わるため会意です。なお、部品が意味と音の両方を兼ねる字(亦声字とも呼ばれます)もあり、形声と会意の境界はかならずしも明確ではありません。会意との比較は会意(会意文字)のページでも解説しています。
形声と他の分類との関係
形声文字は、象形・指事・会意で作られた字を意符や音符として取り込み、漢字を大きく発展させました。六書のほかの分類と形声との関係を整理すると、次のとおりです。
| 分類 | 形声との関係 |
|---|---|
| 象形 | 象形文字が意符・音符として広く使われる。例:「江」の「氵」は象形の「水」に由来。 |
| 指事 | 指事文字も、意符や音符として形声文字に用いられることがある。 |
| 会意 | 部品の組み合わせで作る点は共通するが、形声は音を担う部品を含む。境界があいまいな字もある。 |
補足形声文字は数が非常に多いため、漢字学習では「意符でなかま分けし、音符で読みの見当をつける」という見方が役立ちます。同じ音符を持つ字をまとめて覚えると、効率よく漢字を身につけられます。ただし字源研究の面では、現在は音符と考えられている部品が、もともとは意味にも関わっていたとみる説などもあり、形声の成り立ちは見た目ほど単純ではないことも知られています。
