象形(象形文字)とは
象形(しょうけい)とは、物の形をかたどって文字を作る方法です。この方法によって作られた文字を象形文字といい、漢字を分類する伝統的な枠組み「六書(りくしょ)」のひとつに数えられます。
象形の意味
象形は、目に見える物の姿を絵のように描き写して文字としたものです。漢字のもっとも古い作り方とされ、太陽や月、山や川といった自然の事物、人や動物の体、生活に身近な道具などをかたどって生まれました。たとえば「日」は太陽、「月」は三日月、「山」は連なる山の姿、「川」は流れる水を描いた字です。
象形文字は、ほかの分類(指事・会意・形声)の漢字を組み立てるための部品としても重要な役割を果たしており、漢字全体の土台となる存在です。
代表的な象形文字の例
象形文字には、自然・体の部分・人・動物などをかたどったものがあります。代表的な例を挙げると次のとおりです。
| 分野 | 漢字 | かたどったもの |
|---|---|---|
| 自然 | 日・月・山 川・木・火 水・雨 |
太陽・三日月・連なる山・流れる水・立ち木・燃える炎・流れる水・雲から降る雨粒 |
| 体の部分 | 目・口・耳 手・足 |
人の目・開いた口・耳・五本の指のある手・つま先と足首 |
| 人 | 人・子・女 大 |
横向きに立つ人・両手を広げた幼児・ひざまずく人・両手を広げた大人 |
| 動物 | 馬・魚・鳥 牛・羊・犬 |
たてがみと脚を持つ馬・頭と体と尾を持つ魚・羽を広げた鳥・角のある牛の頭・角のある羊の頭・犬の姿 |
| 器物・その他 | 田・米 門・舟 |
区画された田畑・稲穂と米粒・両開きの門・舟の形 |
象形文字の特徴
象形文字には、ほかの分類と比べて次のような特徴があります。
- 具体的な形を持つものに限られる:太陽や山、人や動物のように、目に見えて形のあるものしか表せません。抽象的な事柄を象形だけで表すのは難しいため、ほかの作り方が生まれていきました。
- 数は意外と少ない:象形文字は漢字の出発点ではありますが、その数自体はおおよそ数百字程度といわれています。漢字全体の主流は、後に登場した形声文字です。
- 他の文字を作る土台になる:象形文字は、指事・会意・形声といった分類の漢字の中で、意味を担う部品としてくり返し使われます。「木」「日」「人」など、多くの漢字の中にその姿を見つけることができます。
古い字形から現在の形へ ―象形文字の変化
象形文字は、もともと絵に近い形をしていましたが、時代を追って字形が整理され、現在の楷書(かいしょ)へと姿を変えてきました。大まかな流れは次のとおりです。
| 時代 | 字体 | 特徴 |
|---|---|---|
| 殷 | 甲骨文字(こうこつもじ) | 亀の甲羅や獣骨に刻まれた、もっとも古い字形。絵に近い姿が残っている。 |
| 殷・周 | 金文(きんぶん) | 青銅器に鋳込まれた字形。線がふくよかで、装飾的な雰囲気を持つ。 |
| 秦 | 篆書(てんしょ) | 秦の始皇帝の時代に整理された字形。線が均一で、左右対称的にデザインされている。 |
| 漢 | 隷書(れいしょ) | 線が直線化され、書きやすさが優先された字形。絵としての面影は薄れる。 |
| 魏晋以降 | 楷書(かいしょ) | 現代に至るまで使われている字形。象形のもとになった「形」は、知らなければ気づかないほど抽象化されている。 |
たとえば「馬」は、甲骨文字ではたてがみと四本の脚を持つ馬の姿がはっきり描かれていますが、楷書ではそれが線で抽象化され、知識がなければ馬の絵だとわかりにくい字形になっています。象形文字は、こうした絵から記号への変化の歴史を最もよく示している分類でもあります。
象形と他の分類との関係
象形文字は、ほかの分類の漢字を作るうえでの基礎部品となっています。六書のほかの分類と象形との関係を整理すると、次のとおりです。
| 分類 | 象形との関係 |
|---|---|
| 指事 | 象形文字に点や線などの記号を加えて、抽象的な事柄を表す。例:「本」「末」は象形の「木」に印を加えた字。 |
| 会意 | 象形文字を二つ以上組み合わせて新しい意味を作る。例:「林」(木+木)、「明」(日+月)。 |
| 形声 | 意味を担う部分(意符)として、象形文字に由来する部品が広く使われる。例:「河」の「氵」は象形の「水」に由来。 |
このように、象形文字そのものの数は限られていても、指事・会意・形声の各文字を支える土台として、漢字全体に深く関わっています。
補足象形文字の中には、現在の字形だけを見ても由来の形がわかりにくいものが多くあります。「馬」「魚」「鳥」のように動物をかたどった字や、「目」「耳」のように体の部分をかたどった字も、古い字形(甲骨文字や金文)をたどると、より絵に近い姿だったことが確認できます。
