「とる」の使い分け(取る・捕る・採る・執る・撮る)

同訓異字の全体や他の書き分けは、同訓異字(異字同訓)とはのページをご覧ください。

同じ「とる」と読む漢字には、取る・捕る・採る・執る・撮るの五つがあります。同訓異字の中でも字の数が多く、書き分けに迷いやすい組のひとつです。それぞれ意味によって書き分けられ、一般的な「取る」、つかまえる「捕る」、選び取る「採る」、事を行う「執る」、撮影する「撮る」と整理されます。このページでは、文化庁の使い分け例にもとづきながら、それぞれの意味と例文をくわしく見ていきます。

「とる」の書き分け ―結論

結論

取る = もっとも一般的な「とる」(手に取る・メモを取る)

捕る = つかまえる(魚を捕る・ねずみを捕る

採る = 選んで取り入れる・採取する(人材を採る・血を採る

執る = 仕事や式典を行う・指揮する(指揮を執る・事務を執る

撮る = 写真や映像を撮影する(写真を撮る・映像を撮る

どれを使えばよいか迷ったときは、まず「取る」がもっとも広く使えると覚えておくと安心です。そのうえで、「つかまえる」「選び取る」「事を行う」「撮影する」のように明確な意味がある場合だけ、それぞれ専用の字を選ぶ、という整理が分かりやすいでしょう。

一覧で見る使い分け

五つの「とる」を、意味と典型的な使い方で比べると次のようになります。

漢字 意味の中心 典型的な使い方
取る 一般的に「とる」 本を取る
メモを取る
連絡を取る
捕る つかまえる 魚を捕る
ねずみを捕る
採る 選んで取り入れる・採取する 人材を採る
血を採る
キノコを採る
執る 事を行う・指揮する 指揮を執る
事務を執る
撮る 撮影する 写真を撮る
映像を撮る

以下では、それぞれの漢字をくわしく見ていきます。

取るとる

取るは、「とる」の中でもっとも基本的で、用例の広い字です。手に持つ・自分のものにする・受け取る・記録する・確保するなど、幅広い意味で使われ、ほかの「とる」のどれに当てはまるか迷うときも、まず「取る」を選んでおけば多くの場面で通用します。

主な意味と用法

  • 手に持つ・つかむ:本を取る/受話器を取る/塩を取る
  • 自分のものにする・受け取る:賞を取る/資格を取る/給料を取る
  • 記録する・控える:メモを取る/統計を取る/記録を取る
  • 確保する・予約する:席を取る/部屋を取る/休みを取る
  • 相手と連絡を交わす:連絡を取る/コミュニケーションを取る
  • 除く・取り除く:汚れを取る/疲れを取る
  • 歳を重ねる:年を取る

例文

  • 授業中はノートに丁寧にメモを取るようにしている。
  • 担当者と連絡を取り、日程を調整した。
  • 長年の努力が実って、ようやく資格を取ることができた。

捕るとる

捕るは、動物や人をつかまえる場合に使う字です。とくに、動いているものや逃げるものを追いかけてつかまえる、というニュアンスをもっています。漢字「捕」自体に「とらえる」の意味があり、「捕獲」「逮捕」などの熟語からも、その意味合いが感じ取れます。

主な意味と用法

  • 動物をつかまえる:魚を捕る/ねずみを捕る/虫を捕る
  • 逃げる相手をつかまえる:犯人を捕る(「捕らえる」「捕まえる」も同じ系統)

例文

  • 川で小さな魚を捕って遊んだ。
  • 納屋に住みついたねずみを捕るために、わなをしかけた。

ご注意「捕る」と「取る」は意味が近く、文化庁の使い分け例でも「魚を取る」と書いても誤りではないとされています。「つかまえる」という意味を強く出したいときに「捕る」を選び、一般的な場面では「取る」を使う、という整理がもっとも自然です。

採るとる

採るは、複数の中から選び取る・採取する・採用する場合に使う字です。漢字「採」には「えらびとる」「あつめる」の意味があり、「採用」「採集」「採取」「採決」などの熟語からも、その性格がうかがえます。

主な意味と用法

  • 選んで取り入れる・採用する:人材を採る/新入社員を採る/意見を採る
  • 採取する:血を採る/キノコを採る/山菜を採る/蜂蜜を採る
  • 方針・手段などを選ぶ:方針を採る/手段を採る/決議を採る

例文

  • 今年は十名の新入社員を採ることになった。
  • 健康診断で血を採って検査をする。
  • 会議で多数決を採った結果、案は可決された。

執るとる

執るは、仕事や式典などの物事を行う・とりしきる場合に使う字です。漢字「執」には「とりおこなう」「つかさどる」の意味があり、「執行」「執務」「執筆」「執刀」などの熟語と通じています。日常会話よりも、ややかしこまった文章や公的な文脈で使われることが多い字です。

主な意味と用法

  • 仕事を行う:事務を執る/教鞭を執る(教師として教える)/政務を執る
  • 指揮する・とりしきる:指揮を執る/陣頭指揮を執る
  • 式典などを取り行う:式を執り行う

例文

  • 新監督が初めて自ら指揮を執った試合だった。
  • 長年、教鞭を執ってきた先生が今年退職する。
  • 式は会場で滞りなく執り行われた。

撮るとる

撮るは、写真や映像を撮影する場合に使う、専用性の高い字です。漢字「撮」には「うつしとる」の意味があり、「撮影」という熟語に直結しています。カメラやビデオなどで像を写し取る、という限定された意味で使うのが特徴です。

主な意味と用法

  • 写真を撮影する:写真を撮る/記念写真を撮る/自撮りをする
  • 映像を撮影する:映像を撮る/動画を撮る/映画を撮る

例文

  • 旅先で美しい風景を撮ってきた。
  • 友達と一緒に記念写真を撮る
  • 監督は二年がかりでこの映画を撮った。

迷いやすいケース

「とる」の使い分けで、特に判断に迷いやすいケースを取り上げます。

「写真をとる」は「取る」か「撮る」か

写真を写すという意味では撮るがもっともふさわしい字です。取るでも誤りではありませんが、撮影という意味を明確に示したいときは「撮る」を選ぶのが標準的です。文化庁の使い分け例でも、写真・映像については「撮る」が示されています。

場面 使う漢字
撮影する 撮る 写真を撮る
動画を撮る
一般的に「とる」 取る カメラを取る
(手に取るの意味)

「魚をとる」は「取る」か「捕る」か

魚をつかまえる意味を強く出したいときは「捕る」、ふつうに釣りや漁の文脈で広く表したいときは「取る」も使えます。「採る」を使う場合は、貝や海藻の採取を意識する場面に限られます。

場面 使う漢字
つかまえる 捕る 魚を捕る
虫を捕る
採取する 採る 貝を採る
海藻を採る
一般的に 取る 魚を取る

「人材をとる」は「取る」か「採る」か

人材の採用を表すときは採るがふさわしい字です。「人材を取る」と書いても誤りではありませんが、「採用する」という意味を明確に示したい場合は「採る」が標準的です。同様に、「血を採る(採血)」「キノコを採る(採取)」など、熟語に「採」を含む行為では「採る」を選ぶと整合性がよくなります。

「指揮をとる」「事務をとる」は「取る」か「執る」か

指揮・事務・式典など、物事を行う・とりしきるという意味を強く出すときは執るを使います。日常的なやや軽い場面では「取る」も使われますが、公的な文書や文章では「執る」を選ぶのが標準的です。

場面 使う漢字
とりしきる・職務を行う 執る 指揮を執る
事務を執る
教鞭を執る
日常的に「とる」 取る 仕事を取る
(受注の意味など)

補足このページの使い分けは、文化庁「異字同訓」の漢字の使い分け例を参考にした標準的な目安です。実際の文章では、文脈やニュアンスに応じて別の字が選ばれることもあります。とくに「捕る」「採る」と「取る」は意味が重なる部分が広く、迷ったときに「取る」を選んでも差し支えない場面が多くあります。

■ まとめ
「とる」と読む漢字には、取る・捕る・採る・執る・撮るの五つがあります。もっとも一般的なのは「取る」で、迷ったときの基本の選択になります。そのうえで、「捕る」はつかまえる、「採る」は選び取る・採取する、「執る」は仕事や式典を行う、「撮る」は撮影する、というように明確な意味があるときに専用の字を選ぶのが書き分けの基本です。
他の同訓異字については同訓異字(異字同訓)とはのページに一覧があります。

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