「みる」の使い分け(見る・観る・診る)
同じ「みる」と読む漢字には、見る・観る・診るの三つがあります。それぞれ意味によって書き分けられ、もっとも一般的な「見る」、注意してながめたり鑑賞したりする「観る」、医師が診察する「診る」と整理されます。このページでは、文化庁の使い分け例にもとづきながら、それぞれの意味と例文をくわしく見ていきます。
「みる」の書き分け ―結論
見る = もっとも一般的な「みる」(景色を見る・新聞を見る)
観る = 注意してながめる・鑑賞する(映画を観る・芝居を観る)
診る = 医師が診察する(患者を診る・脈を診る)
もっとも基本となるのは「見る」で、迷ったときはこの字を選んでおけば多くの場面で通用します。「観る」と「診る」は、それぞれ「鑑賞する」「診察する」という明確な意味があるときに選ばれる字です。
一覧で見る使い分け
三つの「みる」を、意味と典型的な使い方で比べると次のようになります。
| 漢字 | 意味の中心 | 典型的な使い方 |
|---|---|---|
| 見る | 一般的に「みる」 | 景色を見る 新聞を見る 面倒を見る |
| 観る | 注意してながめる・鑑賞する | 映画を観る 芝居を観る 試合を観る |
| 診る | 診察する | 患者を診る 脈を診る |
以下では、それぞれの漢字をくわしく見ていきます。
見るみる
見るは、「みる」の中でもっとも基本的で、用例の広い字です。目で物をとらえる・確かめる・調べる・世話をするなど、幅広い意味で使われ、ほかの「みる」のどれに当てはまるか迷うときも、まず「見る」を選んでおけば多くの場面で通用します。
主な意味と用法
- 目で物をとらえる:景色を見る/空を見る/時計を見る
- 読む・目を通す:新聞を見る/資料を見る/手紙を見る
- 確かめる・調べる:味を見る/様子を見る/辞書を見る
- 世話をする・面倒をみる:子供の面倒を見る/後輩の面倒を見る
- 判断する・評価する:人を見る目がある/甘く見る
- 体験する・経験する:痛い目を見る/夢を見る
例文
- 窓から美しい夕日を見る。
- 母は赤ちゃんの面倒を見ながら家事をこなしている。
- もう少し様子を見てから判断しよう。
観るみる
観るは、注意してながめる・鑑賞する場合に使う字です。漢字「観」には「みる」「ながめる」の意味があり、「観察」「観賞」「観劇」「観戦」などの熟語からも、その性格がうかがえます。意識を集中して何かを楽しんだり評価したりするときに選ばれる字です。
主な意味と用法
- 鑑賞する:映画を観る/芝居を観る/舞台を観る/絵画を観る
- 注意してながめる:試合を観る/景色を観る(味わって眺める)
例文
- 週末、映画館で話題の作品を観てきた。
- 歌舞伎を観るのは今回がはじめてだ。
- テレビでサッカーの試合を観るのが日課になっている。
ご注意「観る」と「見る」は意味が重なる部分が広く、「映画を見る」「試合を見る」と書いても誤りではありません。文化庁の使い分け例でも、より一般的な書き方として「見る」が示されています。「鑑賞する」「意識して味わう」という意味を強く出したいときに「観る」を選ぶ、というのが基本の考え方です。
診るみる
診るは、医師が病状を確かめる・診察する場合に使う、専用性の高い字です。漢字「診」には「みる」「しらべる」の意味があり、「診察」「診断」「診療」などの熟語に直結しています。医療の文脈に限定される字で、ほかの場面ではほぼ使われません。
主な意味と用法
- 診察する:患者を診る/病人を診る
- 体の状態を確かめる:脈を診る/喉を診る
例文
- 先生に喉を診てもらったところ、ただの風邪だと言われた。
- その医師は一日に三十人以上の患者を診る。
- 看護師がまず体温を測り、医師が脈を診た。
迷いやすいケース
「みる」の使い分けで、特に判断に迷いやすいケースを取り上げます。
「映画をみる」「テレビをみる」は「見る」か「観る」か
どちらを使っても誤りではありませんが、鑑賞するという意味を込めるなら「観る」、ふだん何気なく目にする程度の場面では「見る」が自然です。映画館でじっくり観る場合は「観る」、テレビをつけっぱなしにしている程度の場面なら「見る」、という感覚で使い分けると整理しやすくなります。
| 場面 | 使う漢字 | 例 |
|---|---|---|
| 意識して鑑賞する | 観る | 映画館で映画を観る 劇場で芝居を観る |
| ふだんの目にする行為 | 見る | テレビを見る ニュースを見る |
「面倒をみる」「様子をみる」は漢字で書く?
「面倒をみる」「様子をみる」は、ふつう見るを使います。「観る」「診る」のような専用の意味ではないため、一般的な「見る」がふさわしい場面です。
ただし、こうした慣用表現では、漢字よりもひらがな表記のほうが読みやすいとして、「面倒をみる」「様子をみる」とひらがなで書くことも広く行われています。文章のスタイルや読みやすさに合わせて選んで問題ありません。
「〜してみる」の「みる」はひらがなで
動詞のあとについて「ためしに〜する」という意味を表す「〜してみる」は、補助動詞と呼ばれ、ふつう漢字を使わずひらがなで書くのが標準です。
| 用法 | 表記 | 例 |
|---|---|---|
| 本来の「みる」 | 見る・観る・診る | 景色を見る 映画を観る |
| 補助動詞の「〜してみる」 | ひらがな | 食べてみる 考えてみる 聞いてみる |
ご注意「食べて見る」「考えて見る」のように補助動詞に漢字を当てても誤りではありませんが、文化庁の「公用文における漢字使用等について」では、補助的な意味の動詞はひらがなで書くことが目安とされています。新聞や教科書、公用文では、補助動詞はひらがなで書くのが一般的です。
「診る」と「看る」の違い
看護に関わる「みる」として「看る」を使う書き方もありますが、「看る」は常用漢字表の「みる」の読みに含まれていません。「看護」「看病」などの熟語では「カン」と音読みで使われ、「みる」の表記としては、ふつう「見る」または「診る」で書き分けるのが標準的です。
補足このページの使い分けは、文化庁「異字同訓」の漢字の使い分け例を参考にした標準的な目安です。実際の文章では、文脈やニュアンスに応じて別の字が選ばれることもあります。「観る」「診る」は意味が限定されている字なので、それ以外の場面では「見る」を選ぶ、と整理すると分かりやすいでしょう。
■ まとめ
「みる」と読む漢字には、見る・観る・診るの三つがあります。もっとも一般的なのは「見る」で、迷ったときの基本の選択になります。「観る」は注意してながめる・鑑賞する、「診る」は医師が診察する、というように明確な意味があるときに専用の字を選ぶのが書き分けの基本です。また、「〜してみる」のような補助動詞の「みる」はひらがなで書くのが標準的です。
他の同訓異字については同訓異字(異字同訓)とはのページに一覧があります。
