「つく・つける」の使い分け(付く・着く・就く)

同訓異字の全体や他の書き分けは、同訓異字(異字同訓)とはのページをご覧ください。

同じ「つく」と読む漢字には、付く・着く・就くの三つがあります。それぞれ意味によって書き分けられ、何かにくっつく・備わる「付く」、目的地や場所に到達する「着く」、地位や仕事に就任する・従事する「就く」と整理されます。対応する他動詞「つける(付ける・着ける・就ける)」も、まったく同じ書き分けです。読みが同じうえに意味も近く、特に「付く」と「着く」は日常で混同されやすい代表的な同訓異字の一つです。このページでは、文化庁の使い分け例にもとづきながら、それぞれの意味と例文をくわしく見ていきます。

「つく・つける」の書き分け ―結論

結論

付く/付ける = くっつく・接触する・備わる・生じる(泥が付く・値段が付く・傷が付く/ラベルを付ける

着く/着ける = 目的地・場所に到達する・体に身につける(駅に着く・岸に着く/船を岸に着ける・着物を着ける

就く/就ける = 地位・職・仕事などに就任する・従事する(職に就く・眠りに就く/地位に就ける

分かりやすい目安は、それぞれの字を含む熟語で覚えることです。「付く」は付着・付録・添付の「付」「着く」は到着・着陸・着地の「着」「就く」は就職・就任・就寝の「就」。「くっつく・備わる」なら「付」、「到達する・身につける」なら「着」、「就任する・従事する」なら「就」と整理すると迷いにくくなります。

一覧で見る使い分け

三つの「つく」を、意味と典型的な使い方で比べると次のようになります。

漢字 意味の中心 典型的な使い方
付く くっつく・接触する・備わる・生じる 泥が付く
値段が付く
傷が付く
習慣が付く
着く 目的地・場所に到達する 駅に着く
目的地に着く
岸に着く
就く 地位・職・状態などに入る・従事する 職に就く
眠りに就く
仕事に就く

以下では、それぞれの漢字をくわしく見ていきます。

付くつく / 付けるつける

付くは、「つく」の中でもっとも基本的で、用例の広い字です。ある物が別の物にくっつく・接触する・備わる・生じるなど、幅広い意味で使われます。「着く」「就く」のどれに当てはまるか迷うときも、到達・就任の意味がなければまず「付く」を選んでおけば多くの場面で通用します。他動詞「付ける」も同様に広い用法を持ちます。

主な意味と用法(付く)

  • くっつく・接触する:泥が付く/ほこりが付く/シールが付く/傷が付く
  • 備わる・加わる:利子が付く/値段が付く/自信が付く/力が付く
  • 生じる・生まれる:習慣が付く/癖が付く/根が付く/芽が付く
  • 灯る・点灯する:火が付く/電気が付く/ライターに火が付く
  • 判断が定まる・気づく:気が付く/見当が付く/決着が付く
  • 従う・味方する:親分に付く/どちらの側に付く

主な意味と用法(付ける)

  • くっつける・取り付ける:ラベルを付ける/スタンプを付ける/印を付ける
  • 加える・添える:条件を付ける/注釈を付ける/名前を付ける
  • 点灯する・起動する:電気を付ける/テレビを付ける/火を付ける
  • 習慣・力などを身につけさせる:力を付ける/自信を付ける/根拠を付ける
  • 監視・同行させる:見張りを付ける/護衛を付ける/先生に付ける

例文

  • 白いシャツに醤油が付いてしまった。
  • 練習を重ねるうちに、自然と技術が付いてきた。
  • 新商品にキャッチーな名前を付けるのに苦労した。

着くつく / 着けるつける

着くは、移動してきて目的地・場所・物に到達する・届く場合に使う字です。漢字「着」には「つく」「きる」「いたる」の意味があり、「到着」「着陸」「着地」「着岸」などの熟語からも、その性格がうかがえます。また「着ける」は、乗り物を岸・場所に到達させるほか、「身に着ける(身体に接触させて装う)」の意味でも使われます。

主な意味と用法(着く)

  • 目的地・場所に到達する:駅に着く/東京に着く/目的地に着く
  • 物・岸などに届く・到達する:岸に着く/手紙が着く/底に着く
  • 席・場所に落ち着く:席に着く/椅子に着く(※「付く」とも書く)

主な意味と用法(着ける)

  • 乗り物を場所に到達させる:船を岸に着ける/車を横付けに着ける
  • 身体に身につける・装う:ネクタイを着ける/アクセサリーを着ける/甲冑を着ける

例文

  • 新幹線は定刻どおりに新大阪に着いた。
  • 長い航海の末、ようやく船が港に着いた。
  • 大切な場に、胸元にブローチを着けて出かけた。

ご注意「着く」は移動の結果として到達するという意味が核心です。「汚れが着く」「名前が着く」のように、移動・到達の意味がない場面では「着く」とは書きません。それらはいずれも「付く」を使います。「到着」「着陸」など関連熟語が当てはまるかどうかを確かめると判断しやすくなります。

就くつく / 就けるつける

就くは、地位・職業・仕事・状態などの中に入る・従事する・その状態になる場合に使う字です。漢字「就」には「つく」「なしとげる」「したがう」の意味があり、「就職」「就任」「就寝」「就労」などの熟語からも、その性格がうかがえます。「付く」「着く」とは意味の方向性が明確に異なり、役割・立場・状態への移行を表します。

主な意味と用法(就く)

  • 職業・仕事に従事する:職に就く/仕事に就く/教職に就く
  • 地位・役職に就任する:社長の座に就く/要職に就く/王位に就く
  • ある状態・行為に入る:眠りに就く/旅に就く/修行に就く
  • 師に弟子入りする・師事する:名人に就く/師匠に就く(※「付く」とも書く)

主な意味と用法(就ける)

  • 地位・職に就かせる:重職に就ける/後継者を地位に就ける
  • 師に弟子入りさせる:名人に就ける/師匠の元に就ける

例文

  • 大学卒業後、希望どおりの職に就くことができた。
  • 新たに首相の座に就いた人物が会見を開いた。
  • 子どもを著名な陶芸家に就けて、技を学ばせた。

ご注意「就く」は就職・就任・就寝の「就」です。職・地位・状態への移行という意味に限って使います。「泥が就く」「駅に就く」とは書きません。また「眠りに就く」は「眠りに付く」と書かれることもありますが、「就寝」の「就」を用いる「眠りに就く」が文化庁の示す標準的な書き方です。

迷いやすいケース

「つく・つける」の使い分けで、特に判断に迷いやすいケースを取り上げます。

「席につく」は「付く」か「着く」か

「席につく」は「着く」「付く」のどちらでも書ける場面ですが、意味の重点が異なります。「席に着く」は移動してその席に到達するというニュアンス、「席に付く」はその席の位置に落ち着く・座るというニュアンスです。文化庁の使い分け例では「着く」が示されていますが、「付く」も広く用いられています。

表記 意味の重点 ニュアンス
席に着く 移動の結果として席に到達する 文化庁の使い分け例で示されている書き方
席に付く その席の場所に落ち着く・座る 日常的にも広く使われる書き方

「気がつく」は「付く」

「気がつく(気付く)」は「付く」を使います。「気づく」は知覚・判断が生じる意味で、「気が付く」「気付く」が標準的な書き方です。「気が着く」「気が就く」とは書きません。同様に「見当が付く」「決着が付く」「折り合いが付く」なども「付く」です。

「眠りにつく」は「就く」

「眠りにつく」は「就く」が文化庁の示す標準的な書き方です。「就寝」の「就」と結びついており、「眠りという状態に入る」という意味からも「就く」が適切です。ただし「眠りに付く」と書かれることも少なくなく、誤りとまでは言えませんが、改まった文章では「就く」を選ぶと無難です。

「身につける」は「付ける」か「着ける」か

「身につける」は意味によって書き分けます。技術・知識・習慣などを習得する意味では「身に付ける」、装身具・衣類などを体に装う意味では「身に着ける」が対応します。

表記 意味の重点
身に付ける 技術・知識・習慣などを習得する 語学を身に付ける
礼儀を身に付ける
身に着ける 衣類・装身具などを体に装う 時計を身に着ける
スーツを身に着ける

「火をつける」は「付ける」

「火をつける」「電気をつける」「テレビをつける」など、点灯・点火する場面は「付ける」を使います。自動詞も同様に「火が付く」「電気が付く」と書きます。「点火」「点灯」の意味でも、字は「着」でも「就」でもなく「付」です。

「名前をつける」は「付ける」

「名前をつける」「あだ名をつける」「タイトルをつける」など、名称・符号などを与える・添える場面は「付ける」を使います。「名付ける」「名付け親」も同じく「付」です。

対応する他動詞「つける」も同じ書き分け

自動詞「つく」と対応する他動詞「つける」も、まったく同じ意味の区別で書き分けます。

意味 自動詞 他動詞 例(他動詞)
くっつく・備わる・生じる 付く 付ける ラベルを付ける
名前を付ける
電気を付ける
到達する・身につける 着く 着ける 船を岸に着ける
アクセサリーを着ける
地位・職などに入る 就く 就ける 後継者を地位に就ける

補足このページの使い分けは、文化庁「異字同訓」の漢字の使い分け例を参考にした標準的な目安です。「付く」「着く」「就く」は、意味が重なる場面もあり、文脈によってはどちらでも書けることがあります。迷ったときは、関連する熟語(付着・添付・付録/到着・着陸・着地/就職・就任・就寝)を思い浮かべると、選びやすくなります。

■ まとめ
「つく・つける」と読む漢字には、付く・着く・就くの三つがあります。もっとも一般的なのは「付く」で、くっつく・備わる・生じるなど広い場面で使われます。「着く」は移動して目的地に到達する場面、「就く」は職・地位・状態に入る・従事する場面に使う字です。
対応する他動詞「つける(付ける・着ける・就ける)」も同じ書き分けです。迷ったときは関連熟語(付着・添付/到着・着陸/就職・就任)と結びつけて考えると、ほとんどの場面で正しく書き分けられます。他の同訓異字については同訓異字(異字同訓)とはのページに一覧があります。

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