「あう」の使い分け(会う・合う・遭う・逢う)
同じ「あう」と読む漢字には、会う・合う・遭うの三つがあり、これに常用漢字表に含まれない逢うを加えた四つの字が使われます。それぞれ意味によって書き分けられ、人と顔を合わせる「会う」、一致する「合う」、偶然のできごとに出くわす「遭う」、と整理されます。このページでは、文化庁の使い分け例にもとづきながら、それぞれの意味と例文をくわしく見ていきます。
「あう」の書き分け ―結論
会う = 人と顔を合わせる(友人に会う)
合う = 一致する・調和する(意見が合う)
遭う = 偶然・好ましくない出来事に出くわす(事故に遭う)
逢う = 「会う」と同じ意味で文学的・心情的な文脈で使う(常用漢字表外)
もっとも基本的な使い分けは、「人と会うのか」「物事が一致するのか」「出来事に遭遇するのか」の三つを分けることです。「逢う」は「会う」と意味が重なりますが、現代の公用文や新聞では使われず、文学作品や手紙などで雰囲気をもたせるときに使われる字です。
一覧で見る使い分け
四つの「あう」を、意味と典型的な使い方で比べると次のようになります。
| 漢字 | 意味の中心 | 典型的な使い方 |
|---|---|---|
| 会う | 人と顔を合わせる | 友人に会う 客と会う |
| 合う | 一致する・調和する | 意見が合う サイズが合う |
| 遭う | 偶然・好ましくない出来事に出くわす | 事故に遭う 夕立に遭う |
| 逢う | 「会う」と同じ(文学的・心情的) | めぐり逢う 恋人と逢う |
以下では、それぞれの漢字をくわしく見ていきます。
会うあう
会うは、人と人とが顔を合わせる場合に使う、もっとも一般的な「あう」です。約束をして会う場合も、たまたま顔を合わせる場合も、相手が人であれば基本的にこの「会う」を使います。
主な意味と用法
- 人と直接対面する:友人に会う/久しぶりに先生に会う
- 会合や面会の場で顔を合わせる:取引先と会う/お客様と会う
- たまたま顔を合わせる:駅で同級生に会う/街で偶然会う
例文
- 来週、東京で旧友に会う予定です。
- 担当の方と一度お会いして話を聞きたい。
- 同窓会で十年ぶりに恩師と会えた。
合うあう
合うは、二つ以上のものが一致する・調和する・ぴったり収まる場合に使います。物の形・大きさ、人の感覚や考え、味の組み合わせなど、対象は幅広く、「あう」の中でもっとも用例の多い字です。
主な意味と用法
- 一致する・つり合う:意見が合う/計算が合う/話が合う
- 調和する・似つかわしい:色が合う/服装が場に合う
- ぴったり収まる:寸法が合う/鍵が合う
- 動作を一緒にする(複合動詞):話し合う/助け合う/向かい合う
例文
- このネクタイは、スーツの色によく合う。
- 家族で意見を出し合って決めた。
- 計算が合わないので、もう一度確認した。
ご注意「合う」は他の動詞のあとにつく形(複合動詞)でも広く使われます。「話し合う」「助け合う」「向かい合う」などは、たがいに動作を交わすという意味で「合う」を選びます。ここで「会う」と書く人もいますが、文化庁の使い分け例では「合う」とすることが目安とされています。
遭うあう
遭うは、予期せぬ出来事や、好ましくない事態に出くわす場合に使います。事故・災害・トラブル・悪天候など、自分の意図とは関係なく起きたことに直面したときに用いるのが一般的です。
主な意味と用法
- 事故・災害に出くわす:事故に遭う/火災に遭う/地震に遭う
- 悪天候に出くわす:夕立に遭う/吹雪に遭う
- 困った事態に直面する:被害に遭う/盗難に遭う/ひどい目に遭う
例文
- 帰り道で激しい雨に遭った。
- 旅行中に思わぬトラブルに遭う。
- あの店は二度も盗難に遭ったそうだ。
ご注意「遭う」は主に好ましくない事態に対して使う、というのが基本の感覚です。よい出来事との偶然の出会いには、ふつう「遭う」は使わず、「会う」(人)や「出会う」「出くわす」などの表現が選ばれます。
逢うあう
逢うは、意味としては「会う」と同じく人と顔を合わせる場合に使われる字です。ただし常用漢字表に含まれていないため、公用文や新聞では用いられません。文学作品や手紙、歌詞などで、情緒的・文学的なニュアンスを出したいときに使われることがある字です。
主な使われ方
- めぐり逢う/久方ぶりに逢う/旧友と逢う
- 恋人や大切な人と逢う(特別な思いを込めて)
例文
- 故郷で十年ぶりに逢えた。
- 遠く離れていても、心は逢っている。
ご注意「逢う」は文化庁の「異字同訓」の漢字の使い分け例には含まれておらず、公用文・新聞・教科書などでは用いられません。日常的な文章では「会う」を使うのが標準的です。文学的な文脈で意図的に選ばれる字とご理解ください。
迷いやすいケース
「あう」の使い分けで、特に判断に迷いやすいケースを取り上げます。
「人と会う」と「人と合う」
人が相手のとき、原則として書くのは会うです。「合う」は人を相手にしません。ただし「気が合う」「馬が合う」のように、人どうしの関係や相性を表すときは「合う」を使います。
| 場面 | 使う漢字 | 例 |
|---|---|---|
| 人と顔を合わせる | 会う | 友人に会う |
| 人どうしの相性 | 合う | 気が合う・馬が合う |
「出会う」「出くわす」と「遭う」
「であう」と読む場合は出会うと書くのが一般的です。よい出来事との偶然のめぐり合わせには「出会う」を、好ましくない事態には「遭う」を使い分けます。
| 場面 | 使う漢字 | 例 |
|---|---|---|
| よい偶然のめぐり合わせ | 出会う | いい本に出会う 素敵な人に出会う |
| 好ましくない事態に直面 | 遭う | 事故に遭う 災難に遭う |
複合動詞での「あう」
動詞のうしろにつく「〜あう」は、たがいに動作を交わす意味で、ふつう合うを使います。
- 話し合う・助け合う・向かい合う・知り合う・愛し合う
「知り合う」「愛し合う」のように人どうしの動作でも、複合動詞の場合は「合う」が標準的な書き方です。
補足このページの使い分けは、文化庁「異字同訓」の漢字の使い分け例を参考にした標準的な目安です。実際の文章では、文脈やニュアンスに応じて別の字が選ばれることもあります。とくに文学作品や個人の手紙などでは、書き手の意図に応じて「逢う」のような字も選ばれます。
■ まとめ
「あう」と読む漢字には、会う・合う・遭うの三つの常用漢字と、常用漢字表外の逢うがあります。基本の使い分けは、人と顔を合わせるなら「会う」、一致・調和するなら「合う」、好ましくない出来事に出くわすなら「遭う」です。「逢う」は文学的・情緒的な文脈で使われる字で、公用文や新聞では用いられません。
他の同訓異字については同訓異字(異字同訓)とはのページに一覧があります。
