「あらわす」の使い分け(表す・現す・著す)

同訓異字の全体や他の書き分けは、同訓異字(異字同訓)とはのページをご覧ください。

同じ「あらわす」と読む漢字には、表す・現す・著すの三つがあります。それぞれ意味によって書き分けられ、気持ちや内容を表現する「表す」、隠れていたものが姿をあらわす「現す」、書物をあらわす「著す」と整理されます。自動詞の「あらわれる」も、同じように「表れる」「現れる」と書き分けます。このページでは、文化庁の使い分け例にもとづきながら、それぞれの意味と例文をくわしく見ていきます。

「あらわす」の書き分け ―結論

結論

表す = 気持ち・考え・意味などを表現する(喜びを表す・言葉で表す

現す = 隠れていたものが姿をあらわす(姿を現す・正体を現す

著す = 書物を書いて世に出す(本を著す・研究書を著す

分かりやすい目安は、それぞれの字を含む熟語で覚えることです。「表す」は表現・発表の「表」「現す」は出現・現実の「現」「著す」は著書・著作の「著」。気持ちや意味を表現するなら「表」、隠れていたものが姿を見せるなら「現」、書物を書きあらわすなら「著」と整理すると迷いにくくなります。

一覧で見る使い分け

三つの「あらわす」を、意味と典型的な使い方で比べると次のようになります。

漢字 意味の中心 典型的な使い方
表す 気持ち・考え・意味を表現する 喜びを表す
言葉で表す
感謝の意を表す
現す 隠れていたものが姿をあらわす 姿を現す
正体を現す
頭角を現す
著す 書物を書いて世に出す 本を著す
研究書を著す

以下では、それぞれの漢字をくわしく見ていきます。

表すあらわす

表すは、気持ち・考え・意味などを、言葉・態度・記号などの形で表現する場合に使う字です。漢字「表」には「あらわす」「おもて」の意味があり、「表現」「発表」「表示」「表情」などの熟語からも、その性格がうかがえます。心の中にあるものや、ある内容を、外から分かる形で示す、というのが基本の意味です。

主な意味と用法

  • 気持ち・感情を表現する:喜びを表す/感謝の意を表す/敬意を表す
  • 考え・意思を表現する:態度で表す/言葉で表す/意見を表す
  • 意味・内容を示す:図で表す/記号で表す/グラフに表す
  • 言葉などが意味を表す:この語は感謝の気持ちを表す

例文

  • 言葉では言いつくせない感謝の気持ちを、贈り物で表した。
  • 調査の結果を、分かりやすくグラフに表す
  • この記号は、危険であることを表している。

現すあらわす

現すは、今まで隠れていたものや見えなかったものが、姿・形を見せる場合に使う字です。漢字「現」には「あらわれる」「いま」の意味があり、「出現」「現実」「現象」「表現」などの熟語と通じています。隠れていたものが目に見える形で出てくる、というのが基本の意味です。

主な意味と用法

  • 姿・形をあらわす:姿を現す/全容を現す/月が雲間から姿を現す
  • 隠していた本性をあらわす:正体を現す/本性を現す/馬脚を現す
  • すぐれた能力をあらわす:頭角を現す

例文

  • 長く姿を見せなかった彼が、ようやく会場に姿を現した。
  • 追いつめられて、犯人はついに正体を現した。
  • 入社まもなく、彼は営業の分野で頭角を現した。

ご注意「現す」は隠れていたものが目に見える形で出てくる意味の字です。「姿を現す」「正体を現す」「頭角を現す」など、慣用的な言い回しが多いのも特徴です。心の中のものを表現する「表す」とは、対象がはっきり異なります。

著すあらわす

著すは、本や文章を書いて世に出す場合に使う字です。漢字「著」には「あらわす」「いちじるしい」の意味があり、「著書」「著作」「著者」「名著」などの熟語に直結しています。書物を書きしるして発表する、という意味に限られる、専用性の高い字です。

主な意味と用法

  • 書物を書いて世に出す:本を著す/小説を著す/研究書を著す
  • 著作をなしとげる:自伝を著す/多くの作品を著す

例文

  • 長年の研究をまとめ、ついに一冊の書物を著した。
  • 彼は生涯に多くの歴史書を著した。

ご注意「著す」は書物を書いて発表する場合に限って使う字です。「著書」「著作」という熟語と結びつけて覚えると確実です。同じ「書く」でも、手紙やメモを書くことには使わず、世に出す書物について用います。

迷いやすいケース

「あらわす」の使い分けで、特に判断に迷いやすいケースを取り上げます。

「表す」と「現す」の使い分け

もっとも迷いやすいのが「表す」と「現す」です。心の中の気持ちや、ある内容を、形にして表現するのが「表す」、隠れていたもの・見えなかったものが姿を見せるのが「現す」です。「喜びを表す」は感情の表現、「姿を現す」は隠れていたものの出現で、意味がはっきり異なります。

場面 使う漢字
気持ち・内容を表現する 表す 喜びを表す
言葉で表す
隠れていたものが姿を見せる 現す 姿を現す
正体を現す

「気持ちが顔にあらわれる」はどちらか

うれしさや不安などの心の状態が、表情や態度ににじみ出る意味のときは「表れる」を使い、「気持ちが顔に表れる」「努力の成果が結果に表れる」と書きます。心の中のものが外に出てくる、という「表」の意味に当たります。一方、「幽霊が現れる」「太陽が現れる」のように、隠れていたものそのものが姿を見せる場合は「現れる」です。なお、この境目は微妙なこともあり、どちらとも解釈できる場面では書き手の意識に応じて選ばれます。

場面 使う漢字
心の状態がにじみ出る 表れる 不安が顔に表れる
成果が表れる
隠れていたものが姿を見せる 現れる 人影が現れる
太陽が現れる

「実力をあらわす」はどちらか

「実力をあらわす」は、注目する内容で字が変わります。隠れていた実力が表に出てきて発揮される意味なら「現す」(頭角を現す、など)、実力を数値や形で示し表現する意味なら「表す」が選ばれます。「頭角を現す」は慣用句として「現」と決まっています。

「本をあらわす」はどちらか

書物を書いて世に出す意味のときは「著す」を使い、「本を著す」「研究書を著す」と書きます。「表す」「現す」は使いません。「著書」「著者」という言葉を思い浮かべれば迷いません。

補足このページの使い分けは、文化庁「異字同訓」の漢字の使い分け例を参考にした標準的な目安です。「あらわす」は、まずそれぞれの字を含む熟語(表現・出現・著作)を思い浮かべると整理しやすくなります。気持ちや内容を表現するなら「表」、隠れていたものが姿を見せるなら「現」、書物を書きあらわすなら「著」です。自動詞「あらわれる」も「表れる・現れる」と同じ考え方で書き分けます。

■ まとめ
「あらわす」と読む漢字には、表す・現す・著すの三つがあります。表すは気持ちや考え・意味を表現する字(表現・発表)、現すは隠れていたものが姿を見せる字(出現・現実)、著すは書物を書いて世に出す字(著書・著作)です。
「気持ち・内容を表現する」なら「表す」、「隠れていたものが姿を見せる」なら「現す」、「書物をあらわす」なら「著す」、と熟語と結びつけて覚えると書き分けに迷う場面が大きく減ります。他の同訓異字については同訓異字(異字同訓)とはのページに一覧があります。

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