「おさめる」の使い分け(収める・納める・治める・修める)
同じ「おさめる」と読む漢字には、収める・納める・治める・修めるの四つがあります。それぞれ意味によって書き分けられ、きちんとしまう「収める」、納入する「納める」、統治する「治める」、身につける「修める」と整理されます。「収める」と「納める」は意味が近く、混同しやすい組み合わせです。このページでは、文化庁の使い分け例にもとづきながら、それぞれの意味と例文をくわしく見ていきます。
「おさめる」の書き分け ―結論
収める = きちんとしまう・成果を得る(成果を収める・カメラに収める)
納める = 納入する・受け渡す(税金を納める・品物を納める)
治める = 統治する・しずめる(国を治める・痛みを治める)
修める = 身につける・整える(学問を修める・身を修める)
「おさめる」の書き分けでもっとも迷いやすいのは「収める」と「納める」です。どちらも「中に入れる・しまう」という意味が重なりますが、「自分のところにきちんとしまう」のが「収める」、「相手に渡す・納入する」のが「納める」と整理すると分かりやすくなります。
一覧で見る使い分け
四つの「おさめる」を、意味と典型的な使い方で比べると次のようになります。
| 漢字 | 意味の中心 | 典型的な使い方 |
|---|---|---|
| 収める | きちんとしまう・成果を得る | 成果を収める カメラに収める 勝利を収める |
| 納める | 納入する・受け渡す | 税金を納める 会費を納める 商品を納める |
| 治める | 統治する・しずめる | 国を治める 痛みを治める |
| 修める | 身につける・整える | 学問を修める 身を修める |
以下では、それぞれの漢字をくわしく見ていきます。
収めるおさめる
収めるは、物や情報をきちんとしまう・成果や結果を得る場合に使う字です。漢字「収」には「とりこむ」「あつめる」の意味があり、「収納」「収集」「収穫」「回収」などの熟語からも、その性格がうかがえます。何かを自分のところに取り入れて、きちんと収まるイメージの字です。
主な意味と用法
- きちんとしまう・収容する:書類を箱に収める/本棚に収める/カメラに風景を収める
- 受け取って自分のものにする:手中に収める/領地を収める
- 成果や結果を得る:成功を収める/勝利を収める/優勝を収める/好成績を収める
- 収入を得る:利益を収める
例文
- 旅先の美しい風景を写真に収めた。
- 長年の努力が実り、ついに優勝を収めた。
- 大切な書類は金庫にきちんと収めてある。
納めるおさめる
納めるは、お金や品物を、しかるべきところに納入する・受け渡す場合に使う字です。漢字「納」には「いれる」「おさめる」「うけいれる」の意味があり、「納入」「納税」「納品」「奉納」「収納」などの熟語からも、その性格がうかがえます。相手に渡して受け取ってもらう場面で使う点が「収める」との違いです。
主な意味と用法
- 金銭を納入する:税金を納める/会費を納める/月謝を納める
- 品物を納入する:商品を納める/注文の品を納める
- 神仏に供える:神に納める/お札を納める
- 物事を終わりにする:仕事を納める/今年の仕事を納める(仕事納め)
例文
- 期日までに税金を納めた。
- クライアントに約束の商品を納める。
- 年末に仕事を納めて、ようやく休みを取る。
ご注意「収める」と「納める」は意味が近く、迷いやすい組み合わせです。「自分のところにきちんとしまう」のが「収める」、「相手に渡す・納入する」のが「納める」と整理すると判断しやすくなります。「成果を収める」「税金を納める」のような定着した言い回しもそのまま覚えておくと便利です。
治めるおさめる
治めるは、国や組織を統治する・乱れたものをしずめる場合に使う字です。漢字「治」には「おさめる」「ととのえる」「なおす」の意味があり、「政治」「統治」「治安」「治療」などの熟語からも、その性格がうかがえます。社会や心身の乱れを鎮めて秩序を整えるイメージの字です。
主な意味と用法
- 統治する:国を治める/領地を治める/民を治める
- 騒ぎなどをしずめる:争いを治める/騒動を治める/場を治める
- 痛みや病気を抑える:痛みを治める/怒りを治める
例文
- 戦国時代、彼はこの地域を長く治めた武将だった。
- 家族間の小さな争いをうまく治めた。
- 薬を飲んで、ようやく痛みを治めることができた。
修めるおさめる
修めるは、学問や技能を身につける・身や行いを整える場合に使う字です。漢字「修」には「おさめる」「ととのえる」「まなぶ」の意味があり、「修学」「修了」「修行」「修養」「研修」などの熟語からも、その性格がうかがえます。学んだり鍛えたりして自分自身を整えるイメージの字です。
主な意味と用法
- 学問・技能を身につける:学問を修める/医学を修める/専門課程を修める
- 身や行いを整える:身を修める/徳を修める
- 武術・芸道を体得する:剣道を修める/茶道を修める
例文
- 大学で経済学を修めた。
- 長年の修行を経て、武道の極意を修めるに至った。
- 学問を修めるには、地道な努力の積み重ねが必要だ。
迷いやすいケース
「おさめる」の使い分けで、特に判断に迷いやすいケースを取り上げます。
「収める」と「納める」の判断基準
もっとも迷いやすいのが、この二つです。判断のコツは、「誰の側におさまるか」を考えることです。
| 判断のポイント | 使う漢字 | 例 |
|---|---|---|
| 自分の側にきちんとしまう・得る | 収める | 勝利を収める カメラに収める 成果を収める |
| 相手の側に渡す・納入する | 納める | 税金を納める 会費を納める 商品を納める |
「成果をおさめる」は「収める」
「成果をおさめる」「勝利をおさめる」「優勝をおさめる」のように、良い結果を自分のものにする場合は、ふつう「収める」を使います。「納める」と書くと「成果を相手に納入する」という別の意味になってしまうため、結果を得る意味では「収める」が標準です。
「会費をおさめる」は「納める」
「会費をおさめる」「月謝をおさめる」「税金をおさめる」のように、お金をしかるべきところに納入する場合は、「納める」を使います。「納入」「納税」「納金」のように、「納」を含む熟語からも、この場面で「納める」が選ばれる理由が分かります。
「学業をおさめる」は「修める」
「学業をおさめる」「学問をおさめる」のように、学んで身につける意味では「修める」を使います。「収める」と書くと「学業を取り入れて自分のものにする」という意味に近づきますが、ふつうは「修学」「修了」と関連する「修める」を選ぶのが標準的です。
| 場面 | 使う漢字 | 例 |
|---|---|---|
| 学問・技能を身につける | 修める | 学問を修める 医学を修める 武道を修める |
| 収穫・成果を得る | 収める | 成績を収める 成果を収める |
「怒りをおさめる」「痛みをおさめる」は「治める」
感情や痛みなどの乱れをしずめる意味では、「治める」を使います。「治療」「治安」のように、乱れたものを整えて静める意味の字です。「収める」と書くこともありますが、しずめる意味を強く出したいときは「治める」がふさわしくなります。
補足このページの使い分けは、文化庁「異字同訓」の漢字の使い分け例を参考にした標準的な目安です。「収める」と「納める」は意味が重なる部分が広く、文脈によってどちらでも書ける場面もあります。迷ったときは、関連する熟語(収納・収穫/
■ まとめ
「おさめる」と読む漢字には、収める・納める・治める・修めるの四つがあります。「収める」は自分のところにきちんとしまう・成果を得る、「納める」は相手に納入する、「治める」は統治する・しずめる、「修める」は身につける・整える、と整理できます。
迷いやすい「収める」と「納める」は、「自分の側か、相手の側か」で判断するのがコツです。他の同訓異字については同訓異字(異字同訓)とはのページに一覧があります。
