「おくる」の使い分け(送る・贈る)

同訓異字の全体や他の書き分けは、同訓異字(異字同訓)とはのページをご覧ください。

同じ「おくる」と読む漢字には、送る・贈るの二つがあります。それぞれ意味によって書き分けられ、物や情報を別の場所へ移動させたり時間を過ごしたりする「送る」、感謝や祝意などを込めて人に金品などを与える「贈る」と整理されます。このページでは、文化庁の使い分け例にもとづきながら、それぞれの意味と例文をくわしく見ていきます。

「おくる」の書き分け ―結論

結論

送る = 別の場所へ移動させる・時を過ごす(荷物を送る・生活を送る)

贈る = 感謝や祝意などを込めて与える(プレゼントを贈る・賞を贈る)

「おくる」の書き分けの基本は、「送る」が物理的な移動や時間の経過を表す基本字、「贈る」は感謝・祝意・愛情といった特別な気持ちを込めて何かを与える具体的な場面に限定される、という整理です。

一覧で見る使い分け

二つの「おくる」を、意味と典型的な使い方で比べると次のようになります。

漢字 意味の中心 典型的な使い方
送る 別の場所へ移動させる・時を過ごす 手紙を送る
駅まで送る
学生生活を送る
贈る 感謝や祝意などを込めて与える 贈り物を贈る
拍手を贈る
言葉を贈る

以下では、それぞれの漢字をくわしく見ていきます。

送るおくる

送るは、「おくる」の中でもっとも基本的で、用例の広い字です。物や人を別の場所へ移動させることや、見送ること、または時間を過ごすことなど、空間的・時間的な移動や経過を表す場合に広く使われます。

主な意味と用法

  • 物や情報を別の場所へ移動させる:荷物を送る/メールを送る/視線を送る
  • 人を見送る・目的地まで同行する:駅まで送る/家まで送る/故人を送る
  • 時を過ごす・暮らす:学生生活を送る/余生を送る/月日を送る
  • 次へ回す・順番をずらす:順送り/送りがな

例文

  • 故郷の母に手紙を送る。
  • 夜遅くなったので、車で家まで送っていきます。
  • 田舎で静かな余生を送っています。

贈るおくる

贈るは、相手に感謝や祝意などを込めて金品や称号、気持ちなどを与える場合に使う字です。漢字「贈」には「おくる」「あたえる」の意味があり、「贈答」「寄贈」「贈呈」などの熟語からも、特別な気持ちを伴って差し出すという性格がうかがえます。

主な意味と用法

  • 感謝や祝意を込めて金品を与える:プレゼントを贈る/花束を贈る/記念品を贈る
  • 敬意や称賛を表して称号などを与える:賞を贈る/称号を贈る
  • 特別な気持ちを伝える:拍手を贈る/エールを贈る/感謝の言葉を贈る

例文

  • 卒業生に記念の品を贈る。
  • 健闘した両チームに惜しみない拍手を贈った。
  • 恩師に感謝の言葉を贈る。

ご注意「贈る」は、相手に利益や喜びを与える前向きな場面で使われます。そのため、単なる業務上の書類や、相手に義務を課すようなものを渡す場合には「送る」が適しています。また、「贈る」は「送る」に包摂される概念であるため、迷った場合や一般的な表現としては「送る」を使うこともできます。

迷いやすいケース

「おくる」の使い分けで、解釈が分かれたり判断に迷いやすいケースを取り上げます。

「プレゼントをおくる」は「送る」か「贈る」か

「プレゼントをおくる」は「贈る」が基本です。プレゼントはそもそも贈り物であり、相手への気持ちが込められているため、「贈る」が自然です。ただし、物理的な配送行為を意識した文脈、たとえば「通販でプレゼントを送る」のように発送そのものを指す場合は「送る」も使われます。

表記 意味の重点 ニュアンス
プレゼントを贈る 気持ちを込めて渡す 感謝・祝いの思いが主体。贈り物としての意味合いを重視する書き方
プレゼントを送る 発送・配達という行為 郵送・宅配など物の移動そのものを指す書き方

「言葉をおくる」は「送る」か「贈る」か

「言葉をおくる」は、文脈によって書き分けが必要です。見送りや送別の意味合いなら「送る」、賛辞や激励、祝いの気持ちを込めたものなら「贈る」となります。

表現 使う漢字 理由
はなむけの言葉を贈る 贈る 門出への祝意や賛辞を込めて渡す
送別の言葉を送る 送る 去っていく人を見送る

「エールをおくる」「拍手をおくる」は「送る」

気持ちがこもっているため「贈る」を使いたくなる場面ですが、文化庁の目安や新聞の用字用語では「エールを送る」「拍手を送る」と表記します。これは、声援や拍手を「相手に向けて動作として届ける」という点に重きが置かれているためです。「贈る」は基本的に、具体的な品物や賞、祝辞などに使われます。

「賞をおくる」は「贈る」

賞・勲章・称号・学位など、正式に授与する場合は「贈る」を使います。「ノーベル賞を贈る」「功労賞を贈る」のように、敬意や栄誉を伴う授与の場面では必ず「贈」を選びます。「贈呈」「贈位」などの熟語もこの意味と結びついています。

補足このページの使い分けは、文化庁「異字同訓」の漢字の使い分け例を参考にした標準的な目安です。「おくる」の書き分けは、物理的・時間的な移動や経過には「送る」を用い、特別な気持ちや価値あるものを与える場合には「贈る」を選ぶという考え方が実用的です。関連する熟語(送信・送迎・見送/贈答・贈呈・寄贈)を思い浮かべると、選びやすくなります。

■ まとめ
「おくる」と読む漢字には、送る・贈るの二つがあります。もっとも一般的なのは「送る」で、物や人、情報の移動や、時間を過ごす場面など幅広く使われます。「贈る」は、相手への感謝や祝意、称賛の気持ちを込めて金品や言葉などを与える場面で選ぶ字です。
単なる合図としての「言葉を送る」と、気持ちを込めた「言葉を贈る」のように、文脈や書き手の意図によって使い分けることが大切です。他の同訓異字については同訓異字(異字同訓)とはのページに一覧があります。

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