「ととのう・ととのえる」の使い分け(整う・調う)

同訓異字の全体や他の書き分けは、同訓異字(異字同訓)とはのページをご覧ください。

同じ「ととのう」「ととのえる」と読む漢字には、整う・調う(整える・調える)の二つがあります。それぞれ意味によって書き分けられ、乱れがなくきちんとした状態になる「整う・整える」、必要なものがそろう・望ましい状態にする「調う・調える」と整理されます。どちらも「よい状態になる・よい状態にする」という点で意味が近く、特に「準備をととのえる」「道具をととのえる」などでは迷いやすい言葉です。このページでは、文化庁の使い分け例にもとづきながら、それぞれの意味と例文をくわしく見ていきます。

「ととのう・ととのえる」の書き分け ―結論

結論

整う/整える = 乱れがなくきちんとした状態になる・乱れを正してきちんとした状態にする(体制が整う・整った文章/隊列を整える・身辺を整える・呼吸を整える)

調う/調える = 必要なものがそろう・望ましい状態にする(家財道具が調う・縁談が調う/晴れ着を調える・費用を調える・味を調える)

分かりやすい目安は、それぞれの字を含む熟語で覚えることです。「整う」は整理・整列・整頓・整備の「整」、「調う」は調達・調味・調和の「調」。「乱れをなくしてきちんとした状態にする」なら「整」、「必要なものを取りそろえる・ほどよく合わせる」なら「調」と考えると、迷いにくくなります。

一覧で見る使い分け

二つの「ととのう・ととのえる」を、意味と典型的な使い方で比べると次のようになります。

漢字 意味の中心 典型的な使い方
整う
整える
乱れがなくきちんとした状態になる・乱れを正す 体制が整う
整った文章
隊列を整える
身辺を整える
呼吸を整える
調う
調える
必要なものがそろう・望ましい状態にする 家財道具が調う
縁談が調う
晴れ着を調える
費用を調える
味を調える

以下では、それぞれの漢字をくわしく見ていきます。

整うととのう / 整えるととのえる

整う・整えるは、乱れがなくきちんとした状態になる・乱れを正してきちんとした状態にする場合に使う字です。人や物の並び、文章、体制、環境、身の回り、体や心の状態など、形や状態がまとまり、秩序のある状態になる場面に広く用いられます。漢字「整」は「整理」「整列」「整頓」「整備」などの熟語に使われ、ばらばらなものや乱れたものを、きちんとした状態にする意味を表します。

主な意味と用法(整う)

  • 乱れがなくきちんとした状態になる:服装が整う/部屋が整う/髪形が整う
  • 隊列・文章・形などがまとまる:隊列が整う/整った文章/形が整う
  • 体制・準備・環境などができあがる:体制が整う/準備が整う/環境が整う
  • 心身の状態が安定する:呼吸が整う/体調が整う/気持ちが整う

主な意味と用法(整える)

  • 乱れを正してきちんとする:髪を整える/服装を整える/身辺を整える
  • 並び・形・文章などをそろえる:隊列を整える/文章を整える/形を整える
  • 体制・環境・条件などを用意し、きちんとした状態にする:体制を整える/環境を整える/受け入れ態勢を整える
  • 心身の状態を安定させる:呼吸を整える/体調を整える/調子を整える

例文

  • 会議の開始前に、資料と座席の配置がすべて整った。
  • 長い坂を上りきったあと、深呼吸をして呼吸を整えた。
  • 大事な試合に備えて、睡眠を十分に取り、体調を整えた。
  • 提出前にもう一度、文章の表現を整えるつもりだ。

調うととのう / 調えるととのえる

調う・調えるは、必要なものがそろう・そろえる・ほどよく望ましい状態にする場合に使う字です。道具・費用・衣類などを用意する場面、味加減をよくする場面、また、話し合いや交渉などがまとまって成立する場面に用いられます。漢字「調」は「調達」「調味」「調和」などの熟語に使われ、必要なものや状態をほどよく合わせる意味を表します。

主な意味と用法(調う)

  • 必要なものがそろう:家財道具が調う/道具が調う/必要な品が調う
  • 費用・資金などが用意できる:資金が調う/費用が調う
  • 相談・交渉などがまとまる:縁談が調う/商談が調う/話し合いが調う
  • ほどよい状態になる:味が調う

主な意味と用法(調える)

  • 必要な物をそろえる・用意する:晴れ着を調える/道具を調える/旅支度を調える
  • 費用・資金などを用意する:費用を調える/資金を調える
  • 相談・交渉などをまとめる:縁談を調える/商談を調える
  • 味加減などをほどよくする:味を調える/塩で味を調える

例文

  • 新生活に必要な家財道具がようやく調った。
  • 式に着ていく晴れ着を早めに調える。
  • 仕上げに少量の塩こしょうで、スープの味を調える。
  • 双方の希望が一致し、無事に商談が調った。

ご注意「調う・調える」は必要なものをそろえる・物事をまとめる・味をほどよくする方向の意味に絞られます。「列を調える」「呼吸を調える」のように、乱れを正す意味では用いません。それらはいずれも「整う・整える」を使います。「調達」「調味」「調和」の熟語に当てはまるかどうかを確かめると判断しやすくなります。

迷いやすい「ととのう・ととのえる」

「整う・整える」と「調う・調える」は、どちらも「よい状態になる・よい状態にする」という意味を持つため、文脈によって迷いやすい言葉です。ここでは、特に判断に迷いやすい表現を整理します。

「準備がととのう」は「整う」が一般的

「準備がととのう」は、必要な作業や状態がまとまり、物事を始められる状態になる意味で、一般には「準備が整う」と書きます。会場設営、資料作成、手続きなどを含めて全体がきちんとした状態になると捉えるためです。一方、「旅支度を調える」「嫁入り支度を調える」など、具体的な品々を取りそろえる含みが強い場面では「調える」が選ばれます。

表記 意味の重点 例
準備が整う 体制・手はずがきちんと備わる 開会の準備が整う
出発の準備が整う
支度を調える 必要な品々をそろえる 旅支度を調える
嫁入り支度を調える

「道具をととのえる」は意味で書き分ける

「道具をととのえる」は意味によって書き分けます。すでに手元にある道具を片付けて使いやすい状態にする意味では「道具を整える」、これから何かをするために必要な道具を取りそろえる意味では「道具を調える」を使います。乱れを正すのか、必要なものを集めるのかで書き分けるのが目安です。

表記 意味の重点 例
道具を整える 手元の道具を片付け、使いやすい状態にする 作業台の道具を整える
散らかった工具を整える
道具を調える 必要な道具を取りそろえる 登山の道具を調える
茶道の道具を調える

「服装をととのえる」と「晴れ着をととのえる」

同じ衣服に関する表現でも、身につけた衣服の乱れを直す場合は「服装を整える」、必要な衣服を用意する場合は「晴れ着を調える」と書き分けます。乱れを直すのか、必要なものをそろえるのかによって使う字が変わります。

表記 意味の重点 例
服装を整える 乱れをなくしてきちんとする 鏡の前で服装を整える
面接前に身なりを整える
晴れ着を調える 必要な衣服を用意する 式のために晴れ着を調える
衣装を調える

「体調・呼吸・髪をととのえる」は「整える」

「体調をととのえる」「呼吸をととのえる」「髪をととのえる」「身なりをととのえる」「姿勢をととのえる」など、体・体の調子・身なりの乱れを正す場面はいずれも「整える」を使います。文化庁の使い分け例でも「呼吸を整える」「身辺を整える」「隊列を整える」が示されています。

「味をととのえる」は「調える」

料理で塩・こしょうなどを加減して味をほどよくする意味では「味を調える」と書きます。「調味」「調味料」の「調」と結びつく表記で、料理に関する文章では「調える」を使うのが標準です。

「縁談・商談がととのう」は「調う」

「縁談がととのう」「商談がととのう」「話し合いがととのう」など、話し合いや取り決めなどが成立する・まとまる場面は「調う」を使います。「物事がまとまる」という意味は「調」が担う領域で、「調停」「協調」などの熟語ともつながります。

「費用・資金をととのえる」は「調える」

費用や資金を用意する場合は「費用を調える」「資金を調える」と書きます。必要なものをそろえる意味なので、「調達」の「調」と結びつけて考えると分かりやすい表記です。

対応する自動詞「ととのう」と他動詞「ととのえる」

「整う・調う」は自動詞、「整える・調える」は他動詞で、対応する自動詞と他動詞は同じ意味の区別で書き分けます。

意味 自動詞 他動詞 例(他動詞)
乱れがなくきちんとした状態になる 整う 整える 隊列を整える
身辺を整える
呼吸を整える
必要なものがそろう・望ましい状態になる 調う 調える 晴れ着を調える
費用を調える
味を調える

補足このページの使い分けは、文化庁「異字同訓」の漢字の使い分け例を参考にした標準的な目安です。「整う・整える」と「調う・調える」は、どちらも「よい状態になる」という点で意味が近く、文脈によって表記の揺れが見られることもあります。迷ったときは、乱れをなくす意味なら「整」、必要なものをそろえる・ほどよく合わせる意味なら「調」と考え、関連熟語(整理・整列・整頓/調達・調味・調和)に当てはめてみると選びやすくなります。

■ まとめ
「ととのう・ととのえる」と読む漢字には、整う・調う(整える・調える)の二つがあります。「整う・整える」は、乱れがなくなる・きちんとした状態にする場面に使い、「体制が整う」「隊列を整える」「呼吸を整える」「身辺を整える」などがその例です。「調う・調える」は、必要なものがそろう・望ましい状態にする場面に使い、「家財道具が調う」「晴れ着を調える」「費用を調える」「味を調える」「縁談が調う」などがその例です。
対応する自動詞「ととのう(整う・調う)」と他動詞「ととのえる(整える・調える)」は、同じ意味の区別で書き分けます。迷ったときは、関連熟語(整理・整列・整頓/調達・調味・調和)と結びつけて考えると、意味の違いを判断しやすくなります。他の同訓異字については同訓異字(異字同訓)とはのページに一覧があります。

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