「とまる・とめる」の使い分け(止まる・留まる・泊まる)
同じ「とまる」「とめる」と読む漢字には、止まる・留まる・泊まるの三つがあります。それぞれ意味によって書き分けられ、動きや作用が停止する「止まる」、その場や位置に固定される・心や記憶に残る「留まる」、宿泊する・船が停泊する「泊まる」と整理されます。対応する他動詞「とめる(止める・留める・泊める)」も、まったく同じ書き分けです。「止まる」と「留まる」は意味が重なる場面もあり、特に判断に迷いやすい代表的な同訓異字の一つです。このページでは、文化庁の使い分け例にもとづきながら、それぞれの意味と例文をくわしく見ていきます。
「とまる・とめる」の書き分け ―結論
止まる/止める = 動き・作用・流れが停止する、または停止させる(車が止まる・息が止まる・水道が止まる/音楽を止める・通行を止める)
留まる/留める = その場・位置に固定される・心や記憶に残る・ある範囲に限定される(ピンが留まる・目に留まる/ボタンを留める・心に留める)
泊まる/泊める = 宿泊する・船が停泊する、または宿泊させる・停泊させる(ホテルに泊まる・船が港に泊まる/友人を一晩泊める)
分かりやすい目安は、それぞれの字を含む熟語で覚えることです。「止まる」は停止・中止・静止の「止」、「留まる」は留意・保留・書留の「留」、「泊まる」は宿泊・停泊・外泊の「泊」。「動きが停止する」なら「止」、「固定される・心に残る」なら「留」、「宿泊・停泊」なら「泊」と整理すると迷いにくくなります。
一覧で見る使い分け
三つの「とまる」を、意味と典型的な使い方で比べると次のようになります。
| 漢字 | 意味の中心 | 典型的な使い方 |
|---|---|---|
| 止まる | 動き・作用が停止する | 車が止まる 息が止まる 時計が止まる 水道が止まる |
| 留まる | その場・位置に固定される・心や記憶に残る | ピンが留まる 目に留まる 心に留まる 記憶に留まる |
| 泊まる | 宿泊する・船が停泊する | ホテルに泊まる 旅館に泊まる 船が港に泊まる |
以下では、それぞれの漢字をくわしく見ていきます。
止まるとまる / 止めるとめる
止まるは、「とまる」の中でもっとも基本的で、用例の広い字です。動いていたものや続いていた作用・流れが停止する意味で広く使われます。「留まる」「泊まる」のどれに当てはまるか迷うときも、固定・宿泊の意味がなければまず「止まる」を選んでおけば多くの場面で通用します。他動詞「止める」も、動きや作用をやめさせる広い用法を持ちます。
主な意味と用法(止まる)
- 動いているものが停止する:車が止まる/電車が止まる/時計が止まる
- 続いていた作用・流れがやむ:息が止まる/血が止まる/水道が止まる/涙が止まる
- 音・声などがやむ:物音が止まる/鳴き声が止まる
- 機能・働きがやむ:電気が止まる/機械が止まる/成長が止まる
主な意味と用法(止める)
- 動いているものを停止させる:車を止める/機械を止める/時計を止める
- 作用・流れをやめさせる:音楽を止める/水を止める/血を止める
- 禁じる・制止する:通行を止める/けんかを止める/立ち入りを止める
- 中断・中止する:話を止める/工事を止める
例文
- 交差点で信号が赤に変わり、車が一斉に止まった。
- 長く続いた鼻血が、ようやく止まった。
- 夜遅くなったので、テレビの音を止めて静かにした。
留まるとまる / 留めるとめる
留まるは、その場・位置・状態にとどまって離れない・固定される場合や、心や記憶に残る場合、ある範囲・程度に限定される場合に使う字です。漢字「留」には「とまる」「とどめる」の意味があり、「留意」「保留」「書留」「留学」などの熟語からも、その性格がうかがえます。他動詞「留める」は、ピンやボタンなどで物を固定する場面でも広く用いられます。
主な意味と用法(留まる)
- その場・位置に固定されて離れない:ピンが留まる/ボタンが留まる/小鳥が枝に留まる
- 心や記憶などに残る:目に留まる/心に留まる/記憶に留まる
- ある範囲・程度にとどまる:現状に留まる/少数に留まる/一時的な影響に留まる
主な意味と用法(留める)
- ピン・ひもなどで固定する:髪をピンで留める/ボタンを留める/書類をクリップで留める
- 心・記憶などにとどめる:心に留める/気に留める/書き留める
- 引き止める・残しておく:その場に留める/客を引き留める/原形を留める
- 限定する・抑える:被害を最小限に留める/発言を一言に留める
例文
- 書店で偶然見かけた一冊が、ふと目に留まった。
- 大切な助言なので、しっかり心に留めておこう。
- 強い風で外れないように、書類をクリップで留めた。
ご注意「留まる」「留める」は、それぞれ「とどまる」「とどめる」とも読みます。どちらの読みでも「その場から動かない状態にする・定着させる」という意味で共通しており、文脈に合わせて使い分けられます。「被害を最小限にとどめる」「現状にとどまる」のように「とどめる・とどまる」と読む方が自然な場面でも、漢字は同じ「留」を用います。
泊まるとまる / 泊めるとめる
泊まるは、宿で夜を過ごす(宿泊する)・船が港にとどまる(停泊する)場合に使う字です。漢字「泊」には「とまる」「やどる」の意味があり、「宿泊」「停泊」「一泊」「外泊」などの熟語からも、その性格がうかがえます。「止まる」「留まる」とは意味の方向性が明確に異なり、夜を過ごす・船をとどめるという限定された意味で使われます。
主な意味と用法(泊まる)
- 宿で夜を過ごす:ホテルに泊まる/旅館に泊まる/友人の家に泊まる
- 勤務先などで夜を過ごす:宿直室に泊まる/会社に泊まる
- 船が港にとどまる:船が港に泊まる/漁船が入り江に泊まる
主な意味と用法(泊める)
- 宿として迎え入れる:友人を一晩泊める/客を泊める
- 船を港にとどめる:船を港に泊める/小舟を岸辺に泊める
例文
- 出張で大阪のホテルに二泊泊まることになった。
- 嵐をしのぐため、船は近くの港に泊まった。
- 遠方から訪ねてきた友人を、その晩は自宅に泊めた。
ご注意「泊まる」は夜を過ごす(宿泊)・船の停泊の意味に限って使う字です。「車が道で泊まる」「時計が泊まる」のように、単に動きがなくなる意味では用いません。その場合は「止まる」を使います。
迷いやすいケース
「とまる・とめる」の使い分けで、特に判断に迷いやすいケースを取り上げます。
「鳥が枝にとまる」は「止まる」か「留まる」か
「鳥が枝にとまる」は「止まる」「留まる」のどちらでも書ける代表的な例です。意味の重点が異なります。「枝に止まる」は飛んでいた動きが停止するというニュアンス、「枝に留まる」はその枝にとどまって離れないというニュアンスです。文脈や強調したい点に応じて選ぶとよいでしょう。
| 表記 | 意味の重点 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 枝に止まる | 飛ぶ動きが停止する | 動きの停止に注目する書き方 |
| 枝に留まる | その枝にとどまって離れない | 固定・滞留に注目する書き方 |
「車をとめる」は「止める」
「車をとめる」「自転車をとめる」など、乗り物を停止させる・駐車する場面は「止める」を使います。「駐車場に車を止める」「路肩に車を止める」のように、走行を停止させる意味では「止」が標準的です。駐車の意味で「停める」と書かれることもありますが、「停」は常用漢字表で「とめる」という訓を持たないため、公用文や新聞などでは「止める」で書くのが一般的です。
「ボタンをとめる」「ピンでとめる」は「留める」
「ボタンをとめる」「ピンでとめる」「クリップでとめる」など、物を固定する・留め具で押さえる場面は「留める」を使います。動きを停止させるのではなく、外れないようにその場に留め置く意味だからです。「留め金」「留め具」のように、固定する道具・行為に関わる場面でも「留」が用いられます。
「目にとまる」「心にとめる」は「留まる・留める」
「目にとまる」「心にとめる」「気にとめる」「記憶にとまる」など、心や感覚に残る・印象づけられる場面は「留まる・留める」を使います。「留意」「保留」の「留」の字義どおり、とどめておく意味からも「留」が適切です。「書きとめる」も同様に「書き留める」と書きます。
「最小限にとどめる」は「留める」
「被害を最小限にとどめる」「発言を一言にとどめる」など、ある範囲・程度の中におさめる・限定する場面は「留める」を使います。「保留」「留意」の「留」の字義どおり、そこにとどめておく意味で「留」が用いられます。読みは「とどめる」となることが多いですが、漢字は「留」で書きます。
「息をとめる」「動きをとめる」は「止める」
「息をとめる」「動きをとめる」「足をとめる」など、動作・作用そのものを停止させる場面は「止める」を使います。「停止」「中止」の意味で、字は「留」でも「泊」でもなく「止」です。
「ホテルにとまる」「家にとめる」は「泊まる・泊める」
「ホテルにとまる」「友人宅にとまる」など、夜を過ごす・宿泊する場面は「泊まる」を使います。「友人を一晩とめる」「客をとめる」のように、宿として迎え入れる場合は他動詞「泊める」です。「宿泊」「外泊」の「泊」と結びつけて覚えるとよいでしょう。
「船が港にとまる」は「泊まる」
船が港にとどまる場合は、停泊する意味なので「泊まる」を使います。「停泊」「碇泊」の「泊」と結びついた用法で、船を岸にとどめる意味では他動詞「泊める」も用いられます。
対応する他動詞「とめる」も同じ書き分け
自動詞「とまる」と対応する他動詞「とめる」も、まったく同じ意味の区別で書き分けます。
| 意味 | 自動詞 | 他動詞 | 例(他動詞) |
|---|---|---|---|
| 動き・作用が停止する | 止まる | 止める | 車を止める 水を止める 音を止める |
| 固定する・心に残す・限定する | 留まる | 留める | ボタンを留める 心に留める 最小限に留める |
| 宿泊する・船が停泊する | 泊まる | 泊める | 友人を泊める 船を港に泊める |
補足このページの使い分けは、文化庁「異字同訓」の漢字の使い分け例を参考にした標準的な目安です。「止まる」「留まる」は意味が重なる場面もあり、文脈によってはどちらでも書けることがあります。迷ったときは、関連する熟語(停止・中止・静止/留意・保留・書留/宿泊・停泊・外泊)を思い浮かべると、選びやすくなります。
■ まとめ
「とまる・とめる」と読む漢字には、止まる・留まる・泊まるの三つがあります。もっとも一般的なのは「止まる」で、動きや作用が停止する広い場面で使われます。「留まる」はその場・位置に固定される、心や記憶に残る、ある範囲に限定される場面、「泊まる」は宿泊する・船が停泊する場面に使う字です。
対応する他動詞「とめる(止める・留める・泊める)」も同じ書き分けです。迷ったときは関連熟語(停止・中止/留意・保留・書留/宿泊・停泊)と結びつけて考えると、ほとんどの場面で正しく書き分けられます。他の同訓異字については同訓異字(異字同訓)とはのページに一覧があります。
